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(社)日本病院薬剤師会

福岡県病院薬剤師会

会長あいさつ

洞薬会 北九州地区勤務薬剤師会 会長 増田和久 平成22年度の総会にて第15代会長に選出されました、社会保険小倉記念病院の増田でございます。
思い起こせば、この35年間、洞薬会と共に歩み、洞薬会に育てていただいたといっても過言ではありません。最後の2年間を、洞薬会のさらなる発展のために微力ながら貢献することで恩返しできればと考えています。就任に際して、いくつかの目標を掲げました。これらを達成するには、会員の皆様のご支援・ご協力を欠かす事はできません。よろしくお願い致します。

 

 まずは、薬学教育6年制移行にともなう、参加型長期実務実習生受け入れについてです。
薬剤師が教育者として薬学教育に携わることになりましたので、カリキュラムを遵守することが前提でのお願いですが、学生には、是非とも、チーム医療の中に身を置きファーマシューティカル・ケアを実践することにより、患者さんが軽快する場面を体験させてあげてください。そうすることで、学生は感動を覚え、「薬剤師を目指して良かった」と感じることでしょう。そのことが、彼らの、引いては我々薬剤師の将来に明るさをもたらすに違いありません 。

 

 すでにご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、厚生労働科学研究班「薬学教育6年制に対応した国家試験の円滑な実施のための問題作成の在り方に関する研究」では、このほど、2012年の新国家試験から導入される「複合問題」のモデル問題を作成しました。複合問題は、「物理・化学・生物」「衛生」「法規・制度・倫理」などの各科目と「実務」とを関連させた問題で、国家試験では、70問出題されることになっています。モデル問題を見る限り、病院での 実務実習が重要視されており、実務実習がより臨床に踏み込んだものでなければならいことが感じられます。そういう意味でも、学生にファーマシューティカル・ケアを実践する機会を多く与えてあげてください 。


 そうすれば、学生を送り出す大学からは、「北九州での病院実習は、実務に基づく経験が学べ、臨床に向き合うことの大切さを習得できる」と評価されるでしょうし、学生は、「実習に行くなら北九州」と後輩達に言い伝えるでしょう。北九州を活性化する意味においても、是非とも、そのようにしたいと思っております 。

 

 これを現実のものとするためにも、会員の施設におかれましては、業務の見直しを行い、薬学6年制時代に相応しい薬剤部に衣替えされんことを期待します。洞薬会としても、実務実習連絡協議会を中心に支援して参ります 。

 

 次にチーム医療とその成果であるプレアボイド報告についてです。

 

 多くの施設で、専門や認定薬剤師の育成、チーム医療・スキルミックスの推進に取り組んでいるものと思います。平成22年の診療報酬改定でも、「感染防止 対策加算」や「NST加算」、「がん診療連携拠点病院におけるキャンサーボード参画」等、専門性を有する薬剤師の参画が要件のチーム医療に点数が付いてい ます。チーム医療の中で、患者の病態を把握した薬剤師が副作用の早期発見および事前回避の実績を重ねることは、今回の改定で見送られた「薬剤師の病棟常駐 配置の点数化」という目標を達成するに最も効果的な手段と考えます。各施設とも、人員配置の見直しや業務改善により1人でも多くの薬剤師を病棟に常駐配置し、薬剤師ならではの存在感を存分に発揮してもらいたいものです。そして、薬剤師が病棟に常駐配置していたからこそ発見できたプレアボイド報告を、多数、報告していただきたいと思います。各施設での積極的な取り組みをお願いします。


 なお、福岡県病院薬剤師会では、2009年8月より,CSVファイルによるプレアボイド報告収集を開始しました。これにより、これまでの紙ベースでの報 告では困難であった、プレアボイド報告のデータベース化が可能になりました。そう遠くない時期に,詳細な報告内容をみなさまにフィードバックできる体制が 整うものと思います。

 

 最後に、薬薬連携・地域連携についてです。


 近年、地域連携やシームレスな医療・介護サービスが求められている中、外来から入院、入院から外来へと患者の生活の場が移動しても、医療・介護サービスが継続できるよう、多職種で協働した患者情報の共有化が進められており、その中で、薬剤師には、継続した薬剤管理を可能とする薬薬連携の推進が求められております。情報共有の媒体としては「お薬手帳」が適切であると考えますが、これまでは病院薬剤師の取り組みが低調なため、入院中の情報が途切れるとの批判 もありました。是非とも、洞薬会の会員施設では、すべての入院患者に対し、「お薬手帳」を活用し、情報のサイクルを廻し続けてもらいたいものです 。


 また、医療連携が進む中でハイリスク薬を中心に、病院薬剤師と薬局薬剤師が情報を共有し同じ目線でファーマシューティカル・ケアを実践することが求められています。ハイリスク薬の副作用の兆候をお薬手帳でモニターすることで,有害事象の回避に繋がれば、「服薬の安全性を担保しているのは薬剤師」との評価 を他の医療従事者に,そして国民にもたらすことができるでしょう。

 

 まずは,連携の手始めに,地域の基幹病院の薬剤師と地区薬剤師会が協働して,脳卒中,がん,急性心筋梗塞,糖尿病などのハイリスク薬に関する薬学的ケアの研修会を開催することを提案します。すでに,社団法人小倉薬剤師会と協働し、薬薬連携研修会が開催されており、開局薬剤師より好評を得ています。このような活動を続け、薬学的ケアに共通の目線が持てた後に、退院時共同指導を実施すれば、地域連携やシームレスな医療・介護サービスが円滑に進むと考えます。

 

 以上、今はまさに、医療現場における薬剤師の将来にわたる位置づけを決定する分岐点に立っているとも言えます。北九州地区のオール薬剤師が一致団結し、明るい薬剤師の将来を切り開こうではありませんか!! 会員の皆様方のご支援とご協力をお願いします。

 

 旧制第六高等学校寮歌「新潮を走る」の一部を引用させていただき、就任の挨拶の結びとさせていただきます。

 

理想の園は遠くとも輝く星の黙示(もくじ)あり 現世の波は荒くとも憂(うれ)いを分つ友あれば 尊き天職(つとめ)を守りつつ八重の潮路を分け行かん

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